相馬二遍返しによせて
2015-07-01


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しかも、このうたが出来たきっかけを調べると、驚くことがたくさんありました。18世紀末の天明の大飢饉の折、相馬の人口は2/3に減ってしまいました。立て直すために、引っ越してきてもらおうと、「こんなに相馬っていいところだよ」と、この歌をPRソングとして歌ったのだそうです。当時藩を移ることは禁じられていておおっぴらには宣伝できなかったため、主にお坊さんたちが中心になって新潟や富山方面に拡めたのだそうです。年貢の軽減や、住居の提供などの対策もして移住は進み、やがて石高は飢饉の前の1.5倍にまで増えたとのこと…。
これは今こそ歌わなければ、という気持ちがより強くなりました。

 小春さんと最初に歌った時はかなりシンプルに三味線とギターで演奏しましたが、彼女が紹介してくれたurlのなかに中村力哉さんという方がすてきなコードを付けたピアノの「相馬二遍返し」の動画がありました。
[URL]
 コードを持たない民謡に新たな拡がりを加える、素晴らしいアレンジです。しかも、とかくこういった和ものは、お手軽で安易なアレンジが氾濫している中、高い力量とメロディに対するリスペクトが一聴して解ります。吉良知彦はいっぺんでこのコードをすっかり憶えてしまったそうです。私達のようなロック畑のミュージシャンには、民謡はとっかかりのないものに思えてしまうのですが、この作品との出会いで、民謡をまったく新しいものとして演奏する扉が開かれました。

 先日、中村力哉さんにお会いすることができました。どうしてもっと早く連絡を取らなかったのかと、自分の怠慢を恥じました。中村さんは「一粒のちから」という、被災地の民踊をアレンジする取り組みをされていることを知りました。被災地に対する思いが強く伝わり、軽い気持ちで「歌って応援」のようなことではない、誠実な意志を強く感じ、感銘を受けました。ぜひこちらもお聴きください。

中村力哉さんのブログ
[URL]

一粒のちから:ピアノで織りなす東北民謡
[URL]

 zabadakで演奏するにあたって、これは天明の大飢饉のあとの「移民の歌」だからレッド・ツェッペリンの「移民の歌」テイストを入れたいと言い出したのは私で、最初はモロそんな感じで演奏していましたが、「ここが奈落なら、きみは天使」に収録したアレンジはまた違っています。レッド・ツェッペリン風味は変わらずですが、ベースラインもギターも「プログレナイト2014」収録の音源よりもさらにハードになっています。篠笛は星衛さんにお願いしました。歌は、古くからの友人である民謡歌手の木津かおりさんにご指導いただき、それをまた私風にして歌っています。


 zabadakは過去にも上野洋子ちゃんが「椎葉の春節」をアイリッシュ風にアレンジして、それをしかもシングル盤でリリースしていますが、それに続き二回目の日本民謡への挑戦です。ぜひ多くのみなさんに聴いていただけますことを祈っています。

*写真は伊達と相馬の境の桜を昨年訪れた際のもの。桜は新たに植えられたものだそうです。

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